タイトルを見てM・
ヴェーバーを教科書的に解説した本と受け取る人も多いだろうが、その予想は大きく裏切られる。
ヴェーバーの主著『プロテスタンディズムの倫理と資本主義の精神』は、これまで
プロテスタンティズムの禁欲的職業倫理を賛美する書として解釈されてきたが、著者によれば、この解釈は間違いである、
プロテスタンティズムの精神を賛美するどころか、人間を営利機械に貶めるものとして呪詛するために書かれた、という。具体的な論証は本書を読んでいただくことにして、テキストに即してというよりも、テキストを縦糸に家族関係や心の病(
神経症)といった
ヴェーバー個人の遍歴を横糸に、論が展開してゆく。主観的な意識(=
プロテスタンティズムの精神)が、意図せざる結果として、社会的・政治的・経済的秩序形成(=資本主義)をもたらすとの論点、近代への懐疑を
ニーチェと共有していたことなど、興趣が尽きない。社会科学、思想史の醍醐味が味わえるスリリングな本である。